日本人大リーガーから学ぶ「地道な努力の大切さ」4パターン


一口に「努力」といっても、何をどの程度頑張ることが明日の成功につながっていくのか、いまいち全容が見えにくいもの。ここはひとつ、アメリカンドリームを叶えた日本人大リーガーの著作から、「地道な努力の大切さ」を確認していきましょう。

  • 【1】「『最大限の準備をする』と言っても、何か特別なことをするわけではない。毎日、同じことを黙々とこなしていくだけだ」(上原浩治|覚悟の決め方)

    この本が上梓された前年(2013年)、ボストン・レッドソックスのクローザーとしてチームのワールドシリーズ優勝に貢献し、胴上げ投手にもなった上原浩治。クローザーとは、自分のチームがリードしていて、あと1イニング凌げば勝ちというシーンで最後に登板する投手のこと。つまり相手チームの反撃を抑え、そのまま勝利に持ち込む重要な役割を担っています。クローザーは、常にチームの勝敗のかかった最終局面でマウンドに上がるわけで、その緊張感たるや想像を絶するものでしょう。この短期集中型の勝負を切り抜けるため、彼はいつも最大限の準備をして臨んでいたといいます。だからといって、何か特別なことをするのではなく、「毎日、同じことを黙々とこなしていくだけ」だったそうです。重責に負けることなくチームの優勝に一役買った彼の言葉だからこそ、それがプレッシャーに打ち克つ唯一の準備なのだと伝わるのではないでしょうか。

  • 【2】「いつも簡単にヒットを打つのも、難しい打球を難なくキャッチするのも、そこに至るまでの準備がきっちりとされているからです」(岩隈久志|感情をコントロールする技術)

    野球を通してメンタルコントロール術がわかるとして、野球ファン以外からも人気の本書。海外FA権を行使した岩隈久志がシアトル・マリナーズと出来高制の1年契約を結び、シビアな評価にさらされながらも、シーズンを通じて球団新人記録となる防御率を達成し、見事に契約延長を勝ち取った翌春に上梓されています。大リーグの慣れない環境で、実力を発揮するために彼が心掛けたのは、「大きな成功を求めない。小さな責任を果たすことからはじめる」、「『実力以上のものを出す必要はない』と思えば緊張はなくなる」といったことだったそうです。失敗を引きずらないための前向きな思考で自分を鼓舞しつつ、日本式の球数を投げ込むトレーニング法ではなく、メジャー式の合理的な練習メニューを取り入れて、結果を残し、チームメイトの信頼を勝ち取っていったといいます。環境に合わせてメンタルもフィジカルも柔軟に鍛えていく「努力」の軌跡には、誰しも学ぶべきところが多いでしょう。

  • 【3】「プロ野球選手となったあとも、無茶な努力はしなかった。怪我をしたら意味がないからだ。無茶な練習の代わりに、23年間、毎日毎日『50回のシャドーピッチング』を必ず続けた。時間にしていたら、1日10分とか15分」(桑田真澄|心の野球 超効率的努力のススメ)

    徹底した合理主義者として知られる桑田真澄が、引退後に記した「野球論」が本書です。べらぼうな練習量や、やみくもな根性論で頑張るのではなく、「効率的な努力」「合理的なトレーニング」に努めることこそが一流選手への道だと彼は語ります。スポーツに限らず、何らかの道を究めようとする人は、えてして「がむしゃらな自分」に酔ってしまうものですが、桑田真澄はそのような自己陶酔をバッサリ否定します。「練習とは、ただ数と時間をこなせばいいというものではない」というのが彼の持論です。冷静に「やるべきこと」を分析した結果、「時間にしたら、一日10分とか5分のシャドーピッチングを23年間続けた」というのが、桑田真澄の「効率的な努力」だったとか。裕福な家庭に生まれたわけではなく、プロ入りをめぐる経緯から、スキャンダラスな野球人生にばかり注目が集まる桑田真澄ですが、「努力は量より質」ときっぱり言い切る独特の野球哲学には、スポーツ経験者でなくともうなずけるのではないでしょうか。

  • 【4】「努力しなければ、人並みにもなれないタイプでした。そんなとき支えてくれた言葉でした。『努力できることが才能である』。試合に負けて、打てずに悔しいとき、素振りをしながら、父が書いてくれた紙を見つめした」(松井秀喜|不動心)

    現役野球選手の著作としては異例となる30万部以上のベストセラーを記録した本書は、松井秀喜が「左手首の骨折」という選手生命を脅かすような大怪我ら復帰した翌年に上梓されています(2007年出版)。タイトル「不動心」は、長嶋茂雄に命名してもらったというエピソードも当時は話題になりました。日本球界のみならず、大リーグでもあれほどの成績を収めた松井秀喜は、意外なことに幼少のころから「自分には野球の才能がない」と考えていたとか。父が毛筆で「努力できることが才能である」と書いた半紙を部屋に貼ることで、自分を励まし続けたとそうです。松井秀喜のポジティブシンキングは実に合理的です。「自分でコントロールできないこととできることを区別する」と割り切ったうえで、野球技術の向上につながるトレーニングをコツコツ重ねたといいます。「ほんの些細なことでもいい。『未来』へ向かう決意を、何か行動にしてみたらどうでしょう。棒の素振りだって、野球では基礎の基礎です。しかし、それを毎日欠かさず続けていくことが、いつかきっと、自分を高めてくれると信じてきました」と本書にもあるように、日々の地道な努力こそが国民的野球スターの成長を支えたのでしょう。

成功者は最初から成功者だったわけではなく、そこに至るまでの積み重ねがあったことがわかります。「野球論」としてのみならず、「人生訓」として味わいのある言葉をかみしめてみてはいかがでしょうか。(山場康弘)